2024.05.06

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低用量アルコール摂取と脳の活動

 「酒気帯び運転・飲酒運転・酒酔い運転」がなぜいけないのか、誰もがご存じの通りです。少し飲むだけでも脳の機能に影響し、運転時の注意力や判断力を低下させてしまうから。そして、その結果取り返しのつかない事故を引き起こすからですが、実際、酒気帯び運転とは、「呼気(吐き出す息のこと)1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上検出された状態」のことです。飲酒検問で、警察官がアルコール検知器を使い、運転者の呼気にどれくらいのアルコールが含まれているかを測定する光景を目にしますが、呼気中アルコール濃度は、お酒に強い人、弱い人といったそれぞれの体質には依存していません。さて、本題に入りますが、「体内アルコール低濃度時においても、運動抑制に関する反応時間の延長と筋電図・脳活動の変化を引き起こしました。このことは、飲酒運転になるかならないか程度の呼気アルコール濃度でも、衝動的な行動を防ぐ認知プロセス、つまり衝突や轢過の回避に影響を与えることを示した」と発表したのは、札幌医科大学医学部神経科学講座および大阪大学大学院医学系研究科法医学教室らの研究グループです。本研究グループは、健康な成人を対象に、低用量アルコール摂取による体内低濃度(呼気アルコール濃度0.15mg/L)で行動と脳活動に及ぼす影響を調査しました。そこで、ストップ・シグナル課題という、運動を突然に止めなければならない課題を行っている最中の脳活動について、機能的MRIと筋電図の同時計測を行なったところ、「体内低濃度であっても、反応時間の延長や筋電図の変化とともに、右下前頭皮質と呼ばれる運動抑制に関与する脳部位の活動が増加することを発見した」ということです。このことは何を意味するのでしょうか。つまり、道交法での酒気帯び運転の基準にあてはまらなくても、飲酒運転になるかならないか程度の呼気アルコール濃度でもブレーキを踏むことやハンドルを切る等の回避行動を行うときの脳活動が変化することを示したわけです。本研究グループは、「飲酒運転の法的規制ぎりぎりの体内アルコール濃度でも行動と脳活動に影響を及ぼすことを明らかにした」と述べています。そして、今後「より現実的な運転環境やシミュレーション設定での研究を通じて、体内低濃度域のアルコールが、日常生活や車の運転に対してどのように影響を与えるか明らかになることが期待される」と結んでいます。運転する時は、アルコールは一口であっても口にしない、ということは鉄則ですね。

アルコール低濃度域における脳機能変化を発見 - ResOU (osaka-u.ac.jp)

 

 

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