認知症中期で環境調整が必要な
79歳女性と馴染みの笑顔
顔なじみのスタッフが紡ぐ、安心の「小さなコミュニティ」
真夜中の「帰宅願望」
真夜中のリビング。節子(79歳)はコートを羽織り、玄関のノブを何度もガチャガチャと鳴らした。アルツハイマー型認知症が進み、彼女の時計は数十年前で止まっている。昼夜の感覚は消え、同居する長女・恵子(48歳)は慢性的な寝不足と「いつ外に出てしまうか」という不安でボロボロだった。
特別な医療処置は必要ないが、生活リズムを整えるのは家族の力だけでは限界だった。慌てて近くの大規模デイサービスを探したが、大勢の利用者や毎回変わるスタッフに節子はひどく混乱し、
と泣いて帰宅する日が続いた。症状はむしろ悪化する一方だった。
「小さなコミュニティ」という救い
そんな恵子が辿り着いたのが、小多機という「小さなコミュニティ」だった。大規模な施設とは違い、少人数制で、「通い」も「泊まり」も、そして「訪問」も、すべて同じスタッフが担当する。
ある夜、節子がまた玄関で帰宅しようとしていると、スタッフが静かに近づいた。
声をかけたのは、昼間の「通い」で一緒に歌を歌ったスタッフだ。混乱していた節子の瞳が、ふっと和らぐ。
顔なじみが生む、安心の暮らし
顔なじみの関係性が、認知症の節子にとって何よりの特効薬だった。急に不安が強まった夜はそのまま「泊まり」を利用し、落ち着いている日は「通い」でリズムを作る。
特別な医療処置を必要としない節子には、医療連携よりも「顔なじみの安心」こそが必要なケアだった。認知症ケアに特化し、暮らしの質を支える小多機だからこそできた解決策だ。
「お母さん、最近ちょっと楽しそうだね」——恵子は、久しぶりにそう思えた。介護に振り回されていた日々が、少しずつ落ち着きを取り戻していた。