「家にいたい」母と、心配でたまらない息子——小規模多機能が作った、ちょうどいい距離
日中独居に不安を抱える同居息子と76歳母の自由な拠点
日中独居への不安
50代の会社員・健一には、仕事中も常に頭の片隅にこびりついている不安があった。
同居する76歳の母は、足腰は弱っているものの、「まだ自分のことは自分でできる」と言い張っている。気丈で、人の世話になることを極端に嫌う性格だ。「施設に入るくらいなら家で死ぬ」というのが口癖で、その意志だけは揺るがない。
しかし、健一が仕事で日中不在にする間、もし転倒していたら? もし火の不始末があったら?——心配は尽きない。
幸い、今のところ重い病気はない。しかし、週に数回デイサービスを利用するだけでは、それ以外の「隙間」の時間を埋められず、健一は焦燥感を抱えていた。
そんな健一が辿り着いたのが、小規模多機能の「柔軟性」だった。
柔軟な対応がもたらす安心
小規模多機能を使い始めて、三ヶ月が経つ頃のことだ。ある日、健一に急な残業と翌朝の早い会議が入った。以前ならパニックになるところだが、今は違う。
一本の電話で「今日はそのまま泊まりにしましょうか」と柔軟に対応してもらえるからだ。
電話越しの母の声は、どこか楽しそうだ。
小規模多機能は母にとって、ただ預けられる場所ではなく、家族との連携を密に取りながら「ちょっとした不安」をプロが肩代わりしてくれる、安心できる選択肢の一つだ。
在宅と介護サービスを組み合わせられる「ほどよい距離感」という幸せ
母の「家にいたい」という意志を尊重したい。その一方で、日中の独居に対するリスクを自分一人で背負いきれるかという不安もある。そんな二つの感情の間で揺れ動いていた健一にとって、24時間365日体制で「安心のバックアップ」があるこの生活は、まさに理想の形だった。
あれから半年が経った。週末、元気に帰宅した母と夕食を囲みながら、健一は思う。在宅と介護サービスを組み合わせられる「ほどよい距離感」こそが、今の自分たちには一番の幸せなのだと。