看護小規模多機能(看多機)の「泊まり」が救った夫婦の在宅生活
老老介護の先にあった、夫婦の新しい日常
老老介護の限界——認知症の妻を一人で支える夫の孤立と不安
「おい、まさ子、そこは危ないぞ」中村勝(74)は、フライパンの焦げ付きを落としながら居間に声をかけた。妻のまさ子(71)が、所在なげに部屋の隅に立っている。アルツハイマー型認知症と診断されて3年。かつて町工場を支えてくれた妻は、今では一人で外出することも難しくなっていた。
勝自身、最近は高血圧と膝の痛みに悩まされている。何より応えるのは慣れない料理だ。自分が作った味気ない茶色いおかずのせいか、鏡を見るたび自分が痩せていくのが分かった。
そんなプライドが勝を孤立させていた。しかし、先月それが限界を迎える。勝が急性腸炎で3日間入院したのだ。遠方の関西にいる息子には頼れず、近隣の住人にまさ子の様子を見てもらう羽目になった。
地域包括支援センターで知った「看護小規模多機能(看多機)」とは
かかりつけ医の勧めで訪ねた地域包括支援センター。そこで紹介されたのが、「看護小規模多機能(看多機)」という場所だった。
見学に訪れた看多機の施設は、温かい家庭的な雰囲気だった。何より勝の心を動かしたのは、
というケアマネジャーの言葉だった。
通い・泊まり・訪問で変わった老老介護の日常
看多機を利用し始めて2ヶ月。週に数回、まさ子が施設に通う日、勝は自分の通院を済ませ、久しぶりに静かな時間を過ごしている。施設で栄養満点の食事を頂いているせいか、まさ子の表情も心なしか明るい。
迎えに来た勝に、妻はふわりと微笑んだ。自分が倒れても、妻のまさ子を守ってくれる「もう一つの場所」がある。背負い込んでいた重い荷物を半分預けたような安心感の中、勝は妻の手を優しく握りしめた。