嫌な予感と、突然の宣告
「……悪い、後で確認する」
部下の報告を遮り、俺、成田(52)は会議室を飛び出した。スマホに表示されたのは「病院」の文字。嫌な予感しかしない。
ソーシャルワーカーの声が胃を締め上げる。大腿骨骨折の手術は成功したが、独居はもう無理。
リハビリと医療ケアができる環境を、あと二週間で探せという宣告だった。
仕事は山積み。妻も共働き。自宅介護は物理的に不可能だ。
「とにかく、早く母と家族を両方、守れる方法をみつけたい……!」
ネット検索を繰り返す中で見つけた、聞き慣れない言葉
翌日、デスクで必死に検索を繰り返す。「世田谷区 介護施設 即入居」。
画面には美辞麗句が並ぶが、特養は数百人待ち。有料ホームは高額すぎる。
「一体どこを信じればいいんだ……!」
ビジネスなら即断即決できる自信がある。だが介護は未知の領域だ。退院という時限爆弾の秒針が耳元で鳴り響く。
その時、ケアマネの言葉を思い出し、指が止まった。
「看多機(かんたき)」?
正式名称は『看護小規模多機能型居宅介護』。サイトを開くと、これまでの施設とは違う言葉が目に飛び込んできた。
「先が見えなかった母の生活」の相談相手がみつかる
読み進めるうちに背筋が伸びた。一つの事業所が「デイサービス」「ショートステイ」「訪問看護」を一体で提供する。顔なじみのスタッフが自宅に来てくれ、体調が悪い時は泊まれる。
「看護師と連携しながら支援。退院直後のリハビリも相談可能」
これだ。施設に入れっぱなしではなく、退院後も、医療支援を受けながら無理なく、母が住み慣れた家で過ごす環境が作れる
翌朝9時。迷わず電話をかけた。「母の退院先を探しています。かなり急いでいるのですが……」
「もちろんです。本日12時にお会いできますか? お部屋の空きも確認済みです」
看多機の速い対応に電話口の相手への期待が高まった。会う前だったが、先が見えなかった母の生活の相談相手がみつかったように感じた。
少しでも早く施設を見つけなければという地獄のような焦燥感が、相談相手が見つかったことで和らいでいく瞬間だった。