2026.01.14
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パブロフの犬と脳内の仕組み
パブロフの犬、という言葉を聞いたことはありますか? 「犬が飼育係の足音を聞くだけで唾液を分泌している」ことに気づいたロシアの生理学者イワン・パブロフが行った実験に由来します。「餌などの『無条件刺激』と、ベルの音のような『条件刺激』が結びつけられることにより生じる連合学習」なのだとか。ただ、この学習が成立して記憶が形成されるためには、条件刺激が無条件刺激よりも少しだけ先行したタイミングで起きる必要があることが、100年以上も前から行動学的に知られていますが、「実際の脳内で、条件刺激を伝える具体的な神経細胞やその活動の様子は不明だった」そうです。そこで、九州大学理学研究院らの研究グループは、「海馬内で文脈情報を表現すると考えられる記憶痕跡細胞に特有の神経活動が、条件刺激として働くことを明らかにした」と発表しました。具体的には、「文脈依存的な恐怖条件づけ学習中のマウス海馬において記憶痕跡になる予定の細胞の活動動態を、独自の遺伝学的手法とカルシウムイメージング法を用いて計測し、その解析の結果、無条件刺激を提示する1〜2秒前に、記憶痕跡細胞が一時的に強く活性化することが明らかになった」と述べています。因みに、カルシウムイメージング法とは、「細胞の活性化時には細胞内カルシウムイオン濃度が上昇することから、細胞内カルシウムイオン濃度の変化を蛍光顕微鏡などで可視化することにより、細胞の活動動態を経時的に計測する研究手法」だそうです。本研究グループは、「今回の発見は、古くから知られている行動学的な現象の脳内基盤を最新の科学により実証した好例であり、ヒトを含む動物の行動選択に重要な役割を担う条件づけ学習と記憶の脳内機構のさらなる理解に貢献します。また、条件づけの制御の破綻により生じると考えられるPTSDや依存症などの精神疾患の原因究明や治療法の開発に役立つことが期待されます」と結んでいます。
“パブロフの犬”の新たな脳内機構の解明 | 研究成果 | 九州大学(KYUSHU UNIVERSITY)
画像はプレスリリースから引用させて頂きました。
SM

