2025.11.21
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変形性膝関節症と認知機能
自分の思うように体が動かない、体のどこかが痛いなど様々な体の不具合は多くの高齢者にとって大きな悩みの一つであり、時には自立を妨げる要因にもなっているはず。例えば、変形性膝関節症(膝OA)は世界で6億人以上が罹患する代表的な疾患であるようです。 その痛みや可動域の制限によって生活の質を大きく損ないますが、単にそれは身体機能の低下をもたらすだけでなく、「自己の身体に関する脳内モデルである身体表象を変調させる可能性が示唆されている」そうです。ただ、これまで「空間認識能力にも関わる体全体の身体表象機能との関連」について十分に検討されていなかったとか。そこで、大阪公立大学大学院現代システム科学研究科の研究グループは、「膝OA患者における身体表象の変調に関する新たな証拠を得るために、認知心理学で古くから研究されてきた『心的回転』を利用した実験を実施した」と発表しました。この「心的回転」とは、頭の中で物体を回転させる空間認識能力のことで、人間の知能を構成する重要な要素のひとつだとか。具体的には、膝 OA を有する高齢女性 59 人と健常な高齢女性 36 人に、「パソコンの画面上に提示された2つの物体が同じか異なるかを判断してボタン押しで回答してもらい」、このとき、半数の試行では 抽象的な物体のペアを提示し、残り半数の試行では、顔を付けることで人の身体に見えるようにした物体のペアを提示したそうです。そして、この実験の結果、健常な高齢女性では明確な身体優位性が 認められたのに対し、膝OAを有する高齢女性ではこの効果がほとんど見られなかったといいます。 本研究グループは、今回の研究成果は、変形性膝関節症に伴う身体表象の機能低下が身体優位性の減少に関与している可能性を示唆 するものであり、リハビリテーションや高齢者支援に新たな視座を提供しうるだろうと述べています。 そして、 今後は、脳活動計測や縦断的研究を通じて、膝OA患者における神経基盤の変調や経時的変化を明らかにしたいと結んでいます。
膝の不調がからだの動きのイメージを弱める? 痛みが認知機能にまで及ぶ、見えない変化を解き明かす|大阪公立大学
画像はプレスリリースから引用させて頂きました。
SM

