2025.11.05
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ALSはなぜ体の動きだけが奪われるのか?
ALS(筋委縮性側索硬化症)は全身の筋肉が衰える難病ですが、その原因は神経細胞が徐々に失われることで起こるそうです。ただ、発症に至る原因は特定されていないとか。そこで、国立遺伝学研究所の研究グループは、生きたまま神経細胞を観察できるゼブラフィッシュを使った研究を行い、「大型運動ニューロンでのみ、オートファジー等の不要なタンパク質を分解する活性が極めて高いことを発見した」と発表しました。実は、不要分子の分解はどの細胞にも起きるのですが、大型の細胞は大量のタンパク質分子を合成、分解する必要があるため、特にその負担が大きいのだそうです。本研究では、ALSに関連する遺伝子変異を導入すると分解はさらに高まり、逆に分解を人工的に抑制すると、神経と筋肉の接合が阻害されることを発見したといいます。要は、体の動きに関わる脳・脊髄・筋肉といった離れた器官を1本の細胞でつなぐ必要があるため、必要的に大きくならざるを得ない「運動ニューロン」がその大きさゆえに大量のタンパク質を正しく合成・分解するという重い負担を抱えていることを示唆しているといいます。つまり、そうした負担の大きさこそ、神経細胞の失われやすさを決定づけ、ALS特有の「体が動かなくなる」という症状となって現れる可能性があると述べています。この病気の特徴である「意識や五感に関わる神経細胞は保たれたまま、体を動かす神経細胞「運動ニューロン」(骨格筋を支配する神経細胞)だけが失われるALSの病態の謎を解く、今後の研究のさらなる進展を期待しましょう!
ALSの病態の謎。 なぜ体の動きだけ奪われるのか? | 国立遺伝学研究所
画像はプレスリリースから引用させていただきました。
SM

