2025.10.15
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車いすと転倒による骨折リスク
「個人宅にせよ施設にせよ、自分に合わない⾞いすの利⽤は、姿勢の保持を困難にし、⾞いすからの転落による⾻折発⽣のリスクを⾼める恐れがありますが、この課題については⼗分な基礎的情報がない」という現状を踏まえて、筑波大学医学医療系/ヘルスサービス開発研究センターの研究グループは、介護保険施設の中で⼊所者数の最も多い介護⽼⼈福祉施設を対象に、茨城県の医療・介護レ セプトデータを⽤いて、⼊所者が介護⽼⼈福祉施設⼊所前に使⽤していた⾞いすの種類と、⼊所後の転倒に関連して発⽣したと思われる⾻折の実態を明らかにした」と発表しました。具体的には、介護⽼⼈福祉施設に⼊所した、要介護⾼齢者のうち⼊所前1ヶ⽉間に⾞いす貸与サービスを利⽤していた人を対象に、使用していた製品を特定し、装備している機能から「多機能型⾞いす」と「標準型⾞いす」に分類。また、股関 節⾻折、前腕⾻折、上腕⾻折を「転倒関連⾻折」と定義し、医療レセプトデータに記載された疾患名等から同定。その結果、⼊所前に⾞いす貸与サービスを利⽤していた⼊所者のうち、多機能型⾞いすを使⽤していた⼈は全体の44.7%、 標準型⾞いすを使⽤していた⼈は55.3%でした。⼊所後の転倒関連⾻折は、⼊所前に多機能型⾞いすを使⽤していた⼈のうち5⼈に発⽣した⼀⽅、標準型⾞いすを使⽤していた⼈には発⽣していなかったとか。このことは、「多機能型⾞いすを継続利⽤できなかったことが⾻折リスクに関与した可能性」を⽰唆していると述べています。ただ、今回の研究では、介護⽼⼈福祉施設⼊所後に実際に使⽤していた⾞いすの種類や、転倒関連⾻折が発⽣した具体的な状況までは把握できていないということです。従って、「施設⼊所前に多機能型⾞いすを使⽤していた⾼齢者が、⼊所後に同様の⾞いすを使⽤できなかったことで転倒関連⾻折が発⽣した」という因果関係を直接⽰すものではないということです。また、⾞いすとは関係ない場⾯で⾻折が発⽣したケースもあるとのこと。とはいえ、本研究グループは、「本研究結果は、これまで⼗分に研究されてこなかった、介護⽼⼈福祉施設における⾞いすの継続的利⽤に関するサービス不⾜の課題を定量的に明らかにした初めての報告であり、今後は、⼊所後の⾞いすの使⽤状況や施設の所有状況に加え、転倒関連⾻折だけではなく、嚥下や褥瘡 (褥瘡:床ずれ)といったその他の健康上の問題が発⽣していないかなど、レセプトデータでは把握できない詳細な情報をアンケート調査により明らかにし、⼊所者が⾃らの⾝体機能に適した⾞いすを使⽤できるような体制づくり(サービスの継続性)に向けて、さらに研究を進めていきたい」と結んでいます。
車いす利用者の施設入所後の骨折リスクを初めて定量評価 | 医療・健康 - TSUKUBA JOURNAL
画像はプレスリリースから引用させていただきました。
SM

