港区立高輪いきいきプラザ

2025.09.29

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「ひっかき行動」からかゆみのメカニズム解明

東京大学大学院農学生命科学研究科らの研究グループは、マウスの「ひっかき行動」を24時間にわたって自動的に解析する新技術を開発した、と発表しました。この「ひっかき行動」とは、マウスが後肢で体を繰り返し引っかく動作のことで、実験動物においてかゆみの指標として広く用いられるとか。これまでのかゆみ研究は、研究者が短時間の動画を目視で観察して評価しており、夜間や長時間にわたる解析は困難だったそうです。今回の研究では、人工知能を用いることで、日常的に生じるかゆみの質や量を正確に数値化することに成功した、と述べています。かゆみの悩みは様々ですが、夜に強くなるかゆみは眠りを妨げ、日中の集中力を低下させるだけでなく、慢性的な疲労や抑うつの原因ともなります。かゆいと掻く、すると皮膚のバリア機能が損なわれ悪化することも少なくありません。本研究チームは、マウスを飼育ケージ内で24時間撮影し、その映像を人工知能(AI)で解析する手法を開発しました。この新技術により、マウスの「ひっかき行動」を人間の観察を超える精度で自動検出することが可能となったそうです。実際、マウスの「ひっかき行動」を24時間解析した結果、健常なマウスでも、昼間(マウスは夜行性なので休息している時間)のほうが長く、ひっかき行動が続くことが分かったといいます。つまり「かゆみがなかなか消えない時間帯」が存在するようで、これは、人間の患者が「夜になるとかゆくて眠れない」と訴える現象と似ており、かゆみの体内リズムに迫る重要な手がかりになると述べています。さらに、「アトピー性皮膚炎を模したマウスでは、かゆみが数日間にわたって続き、眠っているはずの時間にまでひっかき行動を繰り返すことが明らかになった」とか。つまり、単なる一時的なかゆみではなく、「生活のリズムそのものを乱す持続的なかゆみ」が起きていたという訳です。本研究グループは、「従来の短時間観察では見えなかった『かゆみの持続性』などを世界で初めて捉えたものであり、こうした技術の進展は、患者の苦しみに直結する『夜間のかゆみ』など、これまで解明が難しかった問題に正面から取り組む道を開くと同時に、患者さんの生活の質を根本から改善する新しい治療法の開発へとつなげていきたい」と結んでいます。

マウスの「かゆみ」をAIで“見える化”――かゆみの質と量を定量できる新技術を開発―― | 東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部

 画像はプレスリリースから引用させて頂きました。

SM

 

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