2025.09.26
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息で病気を検知できる?
私たちは息をするときに、1000種類以上の揮発性有機化合物(常温で容易に気化する性質をもつ有機化合物)という小さな分子を外に出しているそうです。実は、この小さな分子が、血液や尿と同じように、体の中の代謝の情報をたくさん含んでいるといいます。そこで、京都大学大学院医学研究科附属がん免疫総合研究センター及び慶應義塾大学医学部スポーツ医学総合センターらの研究グループは、鉄の働きによって細胞が壊れる「脂質の酸化」が起こる「フェロトーシス」が進むと、「鉄の匂い分子」として知られる特殊な物質がガスとして細胞から放出されることを発見したと発表しました。実は、このフェロトーシスが起きると、肝臓などさまざまな病気の原因になることが知られているとか。ところが、これまでフェロトーシスを体の中で直接調べるには、肝臓の一部を取り出すような体に負担の大きい検査が必要であったといいます。そのため、もし呼気中の「揮発性有機化合物」を調べられれば、フェロトーシスやそれに関連する病気の進行を息からモニターできる可能性があるのですが、これまではフェロトーシスでどんな揮発性有機化合物が作られるかは不明であったことや微量の揮発性有機化合物を精密に測る技術がなかったことなどの理由で研究はほとんど進んでいなかったそうです。つまり、呼気による病気診断の大きな可能性は示されていたものの、そのカギとなる分子の正体は謎のままだったとか。本研究では、独自に開発した新しい分析技術を用いて、フェロトーシスが進行した際に細胞から放出される揮発性分子を詳しく解析しました。そして、その結果、鉄による脂質の酸化で生じる2種類の分子を見つけたといいます。これらは「鉄の匂い分子」と呼ばれるもので、血が出たときや金属に触れたときに感じる独特の匂いの正体のひとつでもあるとか。本研究グループは、「この新しい呼気バイオマーカー技術は、フェロトーシスに関連する病気をより早い段階で発見したり、進行をモニターしたりできる画期的な手段となることが期待されます。今後は臨床応用に向けて、さらに検証や開発が進められていきます」と結んでいます。
息から病気を検知する-鉄の匂いが教える肝臓の異変-:[慶應義塾]
画像はプレスリリースから引用させていただきました。
SM