港区立高輪いきいきプラザ

2025.09.10

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がん免疫療法の新たな可能性

ご存じのように、がんは日本人の死因の第1位を占める重大な疾患。従来のがん治療は外科的切除、放射線治療、化学療法が中心ですが、近年、患者自身の免疫システムを活性化し腫瘍を排除する「がん免疫療法」は、新たな治療戦略として大変注目されるようになりました。ただ免疫チェックポイント阻害薬は劇的な臨床効果を示す一方で、依然として効果の上がらない症例が多数存在することが大きな課題になっているそうです。そうした背景から、東京科学大学(Science Tokyo)総合研究院 難治疾患研究所 細胞動態学分野らの研究グループは、「統合型グリコ・ナノワクチン(iGN; integrated glyco-nanovaccine)」を開発した、と発表しました。この「iGN」は、抗原提示細胞(免疫系の司令塔として働く細胞)を強力に活性化し、T細胞(がん細胞や感染細胞を直接攻撃する免疫系細胞)によるがん細胞への攻撃を促進することで、マウスモデルにおいて腫瘍を破壊できることを確認した、と述べています。しかしながら、なぜ免疫チェックポイント阻害薬が効果の上がらないケースがあるのでしょうか。この疑問に、当研究グループは、次のように説明しています。「その主要因の1つは、腫瘍組織が『冷たい腫瘍(cold tumor)』と呼ばれる免疫不応答状態にあるため」なのだそうです。つまり、「このような腫瘍では免疫細胞の浸潤が乏しいうえ、がん特異的T細胞の誘導に必須となる抗原提示が十分に行われないため、免疫療法の効果が発揮されにくいと考えられている」とのことです。従って、「熱い腫瘍(hot tumor)」へと変換し、免疫細胞を効率的に呼び込み、腫瘍特異的T細胞応答を誘導する新たな治療アプローチの開発が求められているということです。本研究グループは、「免疫チェックポイント阻害薬が効きにくい膵がんや大腸がんなどでの検証が期待されます。また、マウスで得られた成果を人に応用するためには、効果の確認に加えて、安全性や投与方法の検討も必要です」と述べ、「将来的には、個々の患者に最適化された『オーダーメイド型免疫療法』の開発につながる可能性があり、加えて、ナノ粒子技術などを組み合わせることで、がんだけでなく、感染症や免疫不全疾患など幅広い治療薬の開発にも応用できるだろう」と結んでいます。

がん免疫療法の新戦略 | Science Tokyo - 東京科学大学

画像はプレスリリースから引用させていただきました。

SM

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