2025.09.03
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アルツハイマー病を超早期に検出するには
アルツハイマー病は、記憶力や判断力などの認知機能が徐々に低下していく進行性の神経変性疾患であることは皆さんご存じの通りです。その原因とされているのが、アミロイドβ(アミロイド斑)の蓄積や神経細胞の中にリン酸化という修飾を受けたタウタンパク質がたまり始めるタウ病理。それらが脳の広い範囲に拡がることで、神経細胞が失われて病気を発症すると考えられています。加えて、アルツハイマー病の原因と考えられるアミロイド斑は、症状が現れる20年以上も前から脳内にたまり始めるそうです。一方、タウ病理は、神経細胞死が起こり病気を発症する時期に認められるとか。ただ、一度発症した後では治療が難しいため、発症する前に脳の病変をとらえるバイオマーカーの開発が飛躍的に進んでいる中、体への負担が少なくコストも低い「血液バイオマーカー」は、アルツハイマー病の早期診断法として注目されているということです。さて、本題ですが、国立研究開発法人国立長寿医療研究センター及び東京都健康長寿医療センターらの共同研究グループは、「アルツハイマー病のリスクを超早期に診断する血液バイオマーカーとして注目されるリン酸化タウ(p-tau217)が、脳内に形成されたアミロイド斑の周囲にある神経シナプス活動を反映している可能性を、ヒトの剖検脳を用いた解析から明らかにした」と発表しました。「従来用いられてきたアルツハイマー病の診断バイオマーカー(リン酸化タウp-tau181)とは異なる脳の病変をとらえていることも明らかにし、両者が機能的に異なるバイオマーカーである可能性が示された」とも述べています。すなわち、「アルツハイマー病を超早期に検出する血液バイオマーカーp-tau217が、脳内にアミロイド斑ができたことをとらえるのに対して、以前からアルツハイマー病の診断に用いられてきたp-tau181は、p-tau181を豊富に含む神経細胞が脳の中で壊れていく様子をとらえている可能性が明らかになった」とも述べています。要は、p-tau217とp-tau181が、機能的に異なるバイオマーカーとして使用できる可能性を示しているといいます。本研究グループは、「アルツハイマー病を発症前に検出する血液バイオマーカーと脳内の変化の関係を明らかにするとともに、アルツハイマー病の発症メカニズムの解明や、予防・治療法を開発する上での手掛かりとなります。今後は、本研究の知見を基に、より精度の高い早期診断法の確立や、病気を発症する前に脳病態の進行を抑止する新たな治療法の開発につなげていきたい」と結んでいます。
SM