2025.08.20
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低酸素状態が末梢神経を再生
人間の神経及び神経細胞には深いテーマが隠されています。例えば、髄鞘(ずいしょう)という構造物があります。実は、神経細胞は単独では効率的な情報伝達はできません。しかし、中枢神経にせよ末梢神経にせよこの絶縁体としての役目を持つ髄鞘に取り巻かれることによって「跳躍伝導」と呼ばれる速い電気シグナルの伝達が可能になると言われています。さて、本題ですが、「低酸素状態が末梢神経損傷後の再生を促進するメカニズムを解明した」と発表したのは、国立精神・神経医療研究センターらの研究グループです。ただ、「低酸素」と言ってもここでは病気や事故で引き起こされる「酸素不足」のことではなく、「通常の酸素環境、定型的な発達の中でおこる組織内の酸素濃度の変動によって起こるもの」だとか。本研究グループは、以下のことを明らかにしたと述べています。①低酸素環境下では低酸素誘導因子が増え、髄鞘が作られやすくなる ②この低酸素誘導因子が少ないと神経の回復が遅れることが判明した ③この低酸素誘導因子が髄鞘作りに必要な遺伝子の働きをコントロールする ④低酸素状態では、この誘導因子が神経の再生を助けているということです。さて、本研究グループは、「このような仕組みは神経損傷時の環境下で神経再生を進めるために生体が獲得したメカニズムであり、今後このメカニズムを神経再生促進に応用するためには、さらに様々な検討が必要である」と結んでいます。因みに、補足ですが、髄鞘が損なわれることを「脱髄(だつずい)」といいます。つまり、神経信号を正常に伝えられなくなる状態です。こうした損傷を引き起こすものとして、「脳卒中」「免疫疾患」(ギランバレー症候群など)「多発性硬化症」「栄養欠乏症」「一酸化などの有害物質」などがあるということです。
低酸素状態が末梢神経の再生を促進するメカニズムを解明 | 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター National Center of Neurology and Psychiatry
画像はプレスリリースから引用させて頂きました。
SM