2025.07.30
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意識されない文化差が運動学習に与える影響について
「ヒトの運動学習には、意識的な制御と無意識に進行する自動的なプロセスが関与しており、これらは普遍的で文化に依らないもの」というのが普遍的であると考えられてきましたが、「意識的な制御について、文化依存的な認知バイアスが運動学習の評価に混入してしまう可能性が明らかになった」と発表したのは、早稲田大学データ科学センターらの研究グループです。本研究では、日本人およびノルウェー人の大学生を対象に視覚運動順応課題(脳に入力される視覚情報と、脳から出力する運動指令との対応関係におけるずれを補正し、外界の変化に順応するプロセス)を実施しました。その結果、実際の運動にはグループ間で差がみられなかった一方で、意識的戦略(ある目標を達成するための狙いを、明示的に調整すること)については、日本人グループが目標から大きく逸れた方向を意識的に狙う傾向などを示したそうです。つまり、そのことは意識的戦略に文化依存的なバイアスが存在することを示唆し、運動学習プロセスにおける意識的戦略に文化差がないという定説を改めて検討すべきであることを意味しているそうです。本研究グループは、「従来ヒト普遍的であると仮定されてきた運動学習メカニズムの中でも意識的な側面には文化差があることを示した点にある」と述べ、「この知見や今後の研究を通して、スポーツ教育や運動障害を抱える方のリハビリといった実践の現場におけるよりよい介入法の提案につなげられるのではないか」と結んでいます。
運動学習の戦略にひそむ認知バイアス – 早稲田大学 研究活動
画像はプレスリリースから引用させていただきました。
SM