2025.06.05
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がんは「逃げる」ことで生き延びるってホント?
日本人の死因の第一位ががんであることは周知の事実ですが、その多くは原発巣ではなく「転移」による影響で亡くなっているそうです。そこで素朴な疑問。「がんはなぜ転移するのでしょうか?がんにとって転移はどのようなメリットがあるのでしょうか?」これほど重要な問いに対する明確な答えが、これまでよく分かっていなかったことから、京都大学工学研究科 合成・生物化学専攻らの研究グループは、「がん組織内に活性酸素種の一種である過酸化水素(H2O2)が高濃度に蓄積する領域(ホットスポット)が存在することを発見した」と発表しました。このH2O2ホットスポットでは、転移の初期段階を示す腫瘍「出芽」が活発に起きていることが分かったそうです。つまり、がん細胞は、自らにとって有害な活性酸素種から「逃れる」ために、転移の第一歩を踏み出していると述べています。活性酸素というと、「DNA、タンパク質、脂質などの生体分子に酸化的損傷を与えるため、毒として老化や疾患に関与することが広く認識されている」ということですが、一方で、活性酸素種は単に細胞を破壊するだけでなく、多様に細胞の機能を調節する「シグナル分子」として働いているというのです。このような二面性に着目し、本研究グループは、がんの転移メカニズムの解明に貢献するとともに、転移を抑える新たな治療法の開発にもつなげていきたい」と抱負を語っています。
がんは「逃げる」ことで生き延びる―がん転移の起点は活性酸素種からの逃避だった― — 京都大学 工学部・大学院工学研究科
画像はプレスリリースから引用させて頂きました。
SM