2024.06.14
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親しい顔には強く反応し、親しくない顔には弱く反応?
食料を提供してくれる人や日常的に世話をしてくれる人に親しみを感じることは、人間のごく自然な反応で疑う余地はありません。その時、例えば子供やペットにとって、こうした親切な人々の顔を覚えることは生き延びるために重要なことなのです。さて、本題ですが、「これまでの研究から、長期の経験に基づく学習によって物とその価値を結びつけるには、脳の深部にある大脳基底核、特に線条体尾部が重要な役割を果たすことが知られていましたが、このメカニズムが、日常生活のような、実験室環境とは異なる複雑な社会的状況でどのように機能するかは不明だった」と話すのは、京都大学ヒト行動進化研究センターらの研究グループです。そこで、本研究グループは、サルに、親しい人と親しくない人の顔写真を見せ、その際の線条体尾部の神経活動を記録しました。その結果、物の価値を覚えるのと同じメカニズムで、親しい人の顔も脳に記憶されることが明らかになった、とのことです。サルの実験では、「1年以上にわたって日常的に世話してくれている人と、会ったことのない人の顔写真を提示し、線条体尾部の神経活動を記録」。その結果、「親しい顔には強く反応し、親しくない顔には弱く反応することが確認された」そうです。また、同じ神経細胞が、「物の価値の大小に対しても同様に反応する」というのです。どういうことかというと、この神経細胞が、「価値が高いものを素早く見つける行動にも関わっている」というから驚きです。実は、こうした研究は「線条体尾部を含む大脳基底核の障害による疾患(パーキンソン病など)の理解や治療にも役立つ可能性がある」と述べています。そして、本研究グループは「将来的に、親しい人を識別できなくなった方が昔の記憶を取り戻し、身近な人への親近感を再び感じられるようになる治療法の開発が期待されます」と結んでいます。
親しい人の顔を学習する神経メカニズムを解明 | 京都大学 (kyoto-u.ac.jp)